森のようちえん 森のたんけんたい

森のたんけんたいは、愛知県春日井市の森の中で活動しています。子どもの主体性を尊重し、自分や相手の気持ちを大切にしながら保育を行っています。自然の中での活動が主ですが、音楽、造形、劇などの芸術活動や表現活動なども行っています。

ひたすら寄り道の日

 

 
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いつものように森でのお散歩が始まって、その日は、最後を歩く子と一緒にゆっくり歩いた。

歩き始めてすぐの場所の奥まったところにある、ナツハゼの木に走っていく子どもたち。年長を中心にナツハゼを取れるだけ取っていた。(年長くらいだと自分で届くからいいんだよね)

たくさん取ったと満足気に見せてくれては、前の方にいるスタッフや子どもたちの方に走っていく子、手が届かない小さい子たちに分けてあげている子。その子も前の方にいる子たちの方に歩いていった。

そのあと、何人かの年少も2歳も、自分でとりたい!と、しばらくの時間ナツハゼの木に向かって、頑張って実をとろうとしている。「取って!」と言いに来るわけでもなく、自分たちでずっととっている。それを遠くで眺めていた。夢中で、みんな楽しそうだなあ。どんなタイミングで戻ってくるのかな。

前の方にいるスタッフと子どもたちのことを考えると、待っていてくれているよな~と気になる。でも、急かしたくない大事な時間だよなと思い、そのまま見守っていた。

なんだかんだみんなで戻ってきた子どもたち。(おかえり!満足したかな?)ナツハゼを一緒にとって楽しんできた仲間たちは、なんだか団結しているようなかんじ。いまにも遊びたい状態!芝生の坂をかけ降りる。坂の下にリュックをすぐに降ろしては遊ぶ気満々だ。何人かでつながって大笑いでおしり滑りをしたり、まだ咲いていたブタナを摘んで花束を作ったり、階段を登り降りしたり、バッタ捕りが始まる。ごっこ遊びの配役決めもしている。

私もリュックを降ろそうっと。(きょうの寄り道は長くなりそうだぞ~)

遊んで満足した子は、何人かは先に進んだけど「まだまだここで遊びた~い!」と満面の笑みの子どもたち、残った子は7人くらいかな。

先を歩いているスタッフたちに「いま小さい子たちが寄り道が楽しいのでゆっくり行きたくて、大きい子たちと先に行っていてくださ~い!」と伝えに走る。これで安心して寄り道ができそうだ。もう一人のスタッフと遊びを見守る。

しばらく様子を見て、そろそろ進もうかな(ごはんの時間を考えると)と思う。あんまり出発できるのを期待せず、いつもスタッフや子どもが、お弁当の時間や集まる時間に鳴らしているベルを鳴らしてみる。チリンチリンチリーン♪「そろそろみんなのところ行ってみようかな~」とさりげなく言う私。それからリュックを背負ったり、降ろしたり(お水を飲んだり)友だちを迎えに行ったり、行きつ戻りつ、ゆっくり進んでいく。なんだかんだでみんな出発する。

さて、それからも寄り道はつづく、つづく。死んだミミズを捕まえた!と盛り上がって虫かごに入れて観察したり、バッタ大好きな男の子がバッタを捕まえて、大事にしながら柱を登らせたりして遊んだり。

この日の目的地の広場は、ちょっと遠いところなんだよな。頑張ろう!

長い枝を持っている子がいたので、電車ごっこをしてみる。それが楽しかったみたいで、連結したり、追いかけたりしてキャーキャー言いながら結構盛り上がる。それでしばらくいっしょに走っていたら、久しぶりにみんな(大きい子たち)と会った。みんなもまだまだ寄り道中だったらしい。栗をとるのに夢中だった。崖のところも降りていき、どの子も栗を取っては剥いている。後ろの寄り道組と前の寄り道組がつながって、またまた寄り道が楽しいね。

寄り道はこんなもんじゃない。まだまだ続く。この日の目的地には他の団体さんがいたので、目的地を変えた。でもそれは疲れること、大変なこと、というよりも、また寄り道ができるというかんじで、ゆっくりなお散歩を満喫している。

写真は、家から持ってきた図鑑をみんなで見ている図。じっくり時間をかけて見ている。すごい盛り上がりだな。隙を見て「そろそろお腹空いて来ちゃったな~」とつぶやく私。それを聞いて左の女の子も「お腹すいたから、早く行こうよ~」と言っている。

ようやく目的地に着いたらもうごはんの時間だった。よ~く歩いたから、お弁当をいつも残す2歳の男の子も全部食べていた。おどろく私と、自分のことのように大喜びして拍手する3歳の女の子。にやっと照れる男の子。

帰りは帰りで、寄り道して帰った。2歳の4人で、早めに出発してゆっくり歩くことにした。特に小さい子の場合、ぎりぎりまで遊んで急いで帰るより、早めに出発して、時間と気持ちに余裕を持って遊びながら歩く方がいいな。大きい子にとっては、遊び具合、盛り上がり方によって、前者の方がいいことが増えていくけど。帰り道に何に出会えるか、何が楽しいかはわからないからね。いつも発見だね。

帰りは、14時にお母さんのところに帰らなければならない。でもそれはこちらのこと。「もうおしまい」「だめ」「早く」と子どもたちに押し付けて強制するのとは違う。遊具でも遊んだり、どんぐりを拾ったりしながら、そっと時計を見て確認する。そろそろかな!と思うと遊びながら帰る作戦に出る。どうせだったら、楽しく、笑いながら、遊びながら帰りたい!(無事いつもの時間に着きました)

目的地に行くのもお散歩だけど、そればっかりになってしまったら楽しくなくなってしまう。目的地に行くまでがお散歩なんだよね。大人は、時間と気持ちに余裕を持って、心ゆくまで付き合いたい。それでも中断したり、進まなきゃいけないときはあるんだけど、急かさず、焦らず、自然に、楽しみながら進めるように、ちょっとしたきっかけや遊び心を大事に、柔軟にいきたいな!と強く感じた日でした。

子どもが心から満足できるまで待つことは、簡単にはできないかもしれない。(時間の余裕も気持ちの余裕もどちらも必要だもんね)寄り道だけじゃなく、とことん待って、見守ってもらう経験をたくさんした子どもたちは、自分のことも人のことも、あたたかく待てる人、見守ることができる人になっていくよなあと思う。結果だけじゃなく成長する過程や、人(他人も自分も)の背景や感じ方や考え方を尊重できると思う。

いま、毎日森で過ごしていて、子どもたちがそれを体現しているなと感じる。子どもたちの待つ姿勢、受け入れる姿勢に感心する日々。子どもたちを見習っていこう!

 

ゆきほ